「岐阜」で先進医療へ挑戦。
CT等を新たに設置し、地域の中核病院として
大きく新しく生まれかわる
医療センターながら18時に診療終了
動物病院をきちんと働きやすい職場にする
川本:毎日19時まで診察、日によってはその後手術、家に帰り着くのは22時頃。子どもの寝顔を見て、次の日にまた子どもが起きる前に出勤する。こういう働き方は少し前まで当たり前だったと思います。子どもが大きくなり大切な時間を失っていたことに気付きましたが、時すでに遅し。そんな私の経験から、スタッフにはきちんと自分の時間を取って欲しいという思いと、それを可能にするためには、これまでの病院の診療スタイルを変えることが必要不可欠という結論に辿り着いたんです。病院の増築・病院名変更のタイミングに伴い、当センターでは17:30最終受付、18時に診療終了とし、19時には全員が家に帰り着いている、という形を目指します。
太田:良い動物病院の条件の1つはスタッフを大事にしていることだと思うから、私もその考えに大賛成。私は犬山動物総合医療センターの代表として長年経営に携わってきたけど、自分の時間を取れるようになることは自分の人生の幸福度を高めることに直結すると断言できる。確かに今までこの業界は長時間勤務が当然だった面があるけど、ITや教育サービス等の発達により業務効率化が大きく図られてきているよね。私は最近は恵那さくら動物医療センターを「スマートアニマルホスピタル」にするとよく言っているんだけど、スタッフが働いていてやりがいを感じながら楽しく働くことができ、飼い主様に「次もここに来たい」と思ってもらえるような、スタッフにも飼い主様にもベクトルを向けた動物病院に進化させていく。スタッフが本当に満足して働けていることは飼い主様にも好影響を与えるから、教育制度、勤務体系をはじめ、給与面もメンタル面も総合的にサポートしないとね。
川本:「スマートアニマルホスピタル」を実現するために、スタッフ人数は最大でも30名ほどとしようと思っています。しっかり自分の目の届く範囲で責任ある医療を行い、チームをまとめる。これが当センターらしさかな、と感じます。仮に私が診療に出られない時でも飼い主様を安心させるためにできる限り私からも飼主様にちょっとしたお声掛けはしたいですしね。現時点でもキャパシティーを超えないように予約件数を制限しているのですが、できる限り多くの診療を行うことよりも、自分たちができるベストな医療をきちんと届けることの方が当センターにとっては大事ですね。

太田:その誠実さ、川本先生らしいね!病院の雰囲気を決めるリーダーは院長なので、川本先生が率先して病院としてのあるべき姿を見せてくれるのはとっても大事なことだと思う。特に新人にとって最初に働く場所でその後の働き方のベースが決まるので、川本先生のその考えに触れることは価値があるよね。
恵那さくら動物クリニックと犬山動物総合医療センターが業務提携
両社の強みを活かした医療センターが実現
川本:私の修行先であった犬山動物総合医療センターと縁あって業務提携することとなり、太田先生をはじめとした先生方のバックアップを得られることは非常に心強いです。今回の増築によってCTやCアームが入ったりしてハード面の水準が上がりますが、ソフト面でも太田先生ならびにスペシャリストとジェネラリストの複数の獣医師に定期的にお越しいただくことになるので、医療レベルがぐっと上がります。私の得意な内科と、太田先生の強みである外科と掛け合わせ、医療センターとして高水準の医療を提供できるようになることは、飼い主様だけでなく、スタッフにとっても大きな魅力です。スタッフに「見て学べ」ではなく、きちんと教えられるようになるのは私にとっても嬉しいことです。
太田:川本先生は犬山で6年間勤務医として働いてくれたわけだけど、当時から仕事だけのつき合いだけでなく、よく食事に行ったりしたよね。それが今になってもう一度一緒にお仕事できることにワクワクしているよ!まさかこんな展開になるなんて私も思っていなかったし。川本先生に誘われて、開業前に病院の土地探しで色々回ったことを思い出すね。それぞれの強みを持ち寄って広く、深く医療を提供しつつ、より働きやすい環境を整える。一見すると相反するような動きに見えるけど、私と川本先生の知見を活かせばこそ実現できる。高度な医療を実現しつつここまで働きやすさにこだわっているところは日本全国探してもなかなかないよね。しかもそれをこの自然溢れる岐阜県で実現できれば、生活も仕事も充実する。名古屋まで一本でも行ける便利さもありつつ、山々に囲まれた緑に癒される毎日は、最高だね。恵那市は子育てもしやすく、特に夏場の朝は関東よりも冷涼で過ごしやすいのもお気に入りのポイントかな。

川本:センターで行う太田先生の手術は録画するのでいつでもセンター内で確認ができるようになります。このことはスタッフにとって良い刺激になります。また、希望する飼い主様にはモニター越しで手術の様子を見てもらえるようにすることで、安心感を持っていただけると思います。太田先生の圧倒的な知見をお借りし、センターをブラッシュアップできることは楽しみな点でもあり、緊張する点でもあります(笑)。太田先生は世間的にはレジェンド院長で雲の上の存在として思われがちですが、実際は近くで色々アドバイスしてくれる信頼できる先輩という感じです。私が獣医師になりたての頃は技術や思考の部分で注意を受けることもありましたが、その後はお声かけや食事に行こうか、とフォローしていただきました。それが嬉しかったことを覚えています。話は遡りますが、学生時代の私が犬山を知ったのは実はある週刊誌がきっかけで、犬山が「近年の動物病院はここまで進化している」といった類で特集されていたのを拝見したからでした。太田先生の「常に変革し続ける」DNAとの融合は私を成長させるものになると思っています。
太田:当時は今ほど病院が大きくなかったから毎日診察室から人が溢れていて、怒涛の忙しさだったね。あの忙しさを共有できているのが同志という感じでいいよね。
苦労して獣医師に。だから苦労している人の気持ちがわかる
太田:川本先生の人柄を形成した大きな背景は、宮崎大学合格までの浪人生活の苦労があると思うな。たしか獣医学部に入るまでに紆余曲折あったよね?
川本:よく覚えてくださっていますね。大学は国立一本でと考えていたのですが、ストレートでは合格できなかったんです。予備校の期間限定の講習に行ったこともありましたが、その費用を稼ぐために様々なアルバイトをしながら勉強していたので人より少し遠回りしたかも知れません。
太田:アルバイトをしながら勉強を続けていたって人はなかなかいないと思うけど、その忍耐力、行動力が人間力に直結していると思う。なにを目指すにせよすぐに結果が出ることなんてあまりないから、耐えることを知っている川本先生とであれば切磋琢磨しながら本センターをより良いものにできると信じてるよ。
川本:病院名を「恵那さくら動物病院」から「恵那さくら動物医療センター」に改名したのは覚悟の表れです。この地域になくてはならない病院を目指しましょう!
Profile
“教育環境も働き心地も全て重要。
新しい仲間とともに成長させていく”
川本 久之(かわもと ひさゆき)
恵那さくら動物医療センター センター長

宮崎大学卒業後、愛知県の犬山動物総合医療センターに新卒で入社する。得意とするのは内分泌と皮膚疾患の治療。小学生の頃に弟のように可愛がっていた愛犬をフィラリア症という投薬するだけで発症を防げる病気で亡くしてしまったことをきっかけに獣医師を目指す。三重県出身。2024年10月より恵那さくら動物クリニックを恵那さくら動物医療センターに改名する。
“獣医師歴45年以上の集大成をここに。
これからあるべき動物病院を実現する”
太田 丞慈(おおた じょうじ)
恵那さくら動物医療センター アドバイザー、犬山動物総合医療センター センター長

北里大学卒業後、犬山動物病院に入社。その後一般診療を経て外科を中心としたキャリアを築く。1998年に犬山動物総合医療センター センター長に就任。社会課題の解決をライフワークとしており、定期的な受診を啓発推進する獣医師団体「Team HOPE」を設立する他、動物病院マネジメント業務に携わる方々を対象にスキル向上を目的としたセミナーの開催や参加者相互の情報共有を目的とする動物病院マネージャー会(現 一般社団法人日本動物病院マネジメント協会)の設立に関わる。また、様々な機能障害を持って生まれてきた犬や猫の譲渡支援団体である「Team BOWWOW」を設立する。