獣医師の認定医とは?|なるために必要なことやなるメリットを解説
「専門性のある獣医師ってかっこいい」
「収入をアップするために専門性を身につけたい」
「でも専門性の身につけ方がわからない」
そんなふうに考えている獣医師もいるのではないでしょうか。
専門性のある資格には認定医というものがあり、認定医になることができれば動物病院の転職市場では引く手あまたとなる可能性があります。
今回は獣医師の認定医とは何か、認定医になるまでの手順、認定医になるメリットとデメリットについて解説します。
ぜひご一読いただき、ご自身のキャリアにお役立てください。
認定医とは
認定医はそれぞれの学会が認定する獣医師のことです。
学会には循環器科や腫瘍科など様々な診療科に特化したものがあり、認定されるとそれぞれの学会の分野に特化した認定医になれます。
認定医になるためには学会の定める基準をクリアする必要があり、学会によって基準は異なるので認定医になるための難易度も異なります。
専門医との違い
専門医と認定医の違いは専門性の高さの違いで、専門医の方がより厳しい審査を通過しなければいけません。
残念ながら獣医療業界では専門医制度はあまり整っておらず、専門医が少ないのが現状です。
現状の獣医師が専門性をつけるためには認定医を取得するのが現実的ですね。
認定医になるためには何が必要か
学会によって変わりますが、認定医になることは難しく、途中で挫折してしまう方も多いです。
ここでは認定医になるために必要なものを解説していきます。
獣医師免許を取得し、方向性を決める
当然のことですが、認定医になるためには獣医師になる必要があります。
獣医系の大学では3~4年生時に研究室に所属し、卒業に向けて研究を開始します。
多くの認定医は、この学生時の研究室の専門分野で認定医になる人が多いです。
研究室選びから獣医師のキャリアが始まっているということですね。
スムーズに認定医になるためには獣医師免許を取得する前に方針を決めておくと良いでしょう。
ちなみに、所属した研究室とは全く関係ない分野の認定医になる人もいます。
いつ認定医を目指し始めても遅すぎるということはないので、本気で認定医になりたい場合は諦めずに頑張りましょう。
学会に所属し、定められた規定をクリアする
目指す学会の認定医が決まったら、まずはその学会に所属しましょう。
学会によって定められている規定が異なり、複雑なものも多いのでしっかり確認しましょう。
ここでは動物臨床医学会の獣医総合臨床認定医を例に挙げ解説します。
動物臨床医学会の獣医総合臨床認定医になるためには以下のものが必要です。
基本資格
- 小動物臨床経験を5年間以上有する者。
- 申請時より過去5年間以上連続して本学会の会員であり、会費を完納している者。
- 申請時より過去5年間以内に3回以上本学会へ出席している者
ポイント制
ポイントの取得は以下の基準により、合計50ポイント以上が必要です。
- 受講:認定委員会が定めた本学会のセミナー等を受講し、各分野において2ポイント以上6ポイントまで、合計30ポイント以上のポイント取得が必要です。
- その他、当学会での発表、司会・座長、論文掲載、講習会等の出席に対しても細則に定めるポイントが取得できます。
基本資格を有し、過去7年以内に取得したポイントが50ポイント以上になったら、受験資格申請書を提出し、認定医試験を受験する。
動物臨床医学会ではこのように時間経過とともにクリアできる基準と実際に行動してクリアできる基準があります。
時間経過とともにクリアできる基準は努力次第でどうにかなるものではないので、早めに行動した人が有利になります。
他の学会にも時間経過とともにクリアできる基準が設けられている場合が多いため、認定医を目指す場合は早めに行動するようにしましょう。
認定医になるメリット
認定医になると一般の獣医師と比べて様々なメリットがあります。
ここでは認定医になることのメリットをご紹介していきます。
難病の症例の治療に携われるようになる
認定医になると、病院のホームページのスタッフ紹介などに認定医であることが掲載されることがあり、それを見た飼い主様方が「是非この先生に診てほしい!」と来院されます。
そうすると自然と難病の症例が集まるようになり、一般的な診療では経験できないような難病の治療に携われるようになります。
収入が上がりやすくなる
認定医になると難病の症例の治療ができるようになるだけではなく、自身の収入の向上にもつながります。
開業医の場合
開業医の場合は院長が認定医ということだけで「皮膚科が得意な~病院」「腫瘍科が得意な~病院」というように病院の専門分野を売り出すことができます。
特徴のない病院は特徴のある病院に比べて、患者様が集まりにくい傾向にあります。
患者様が集まってくれば自然と病院の売り上げが上がり、収入は増えていきます。
勤務医の場合
勤務医が認定医となったら、その病院の院長はその認定医の専門分野を専門診療科として立ち上げることが多いです。
専門診療科はいずれも診療報酬が高くなることが一般的です。
その診療報酬の分、動物病院側も勤務医に対して給料を高く設定してくれることが多いです。
また、勤務医の場合は認定医というだけで動物病院の転職市場で引く手あまたとなる可能性があります。
需要がある動物病院を求めて転職を考えるのも良いですね。
活躍の幅が広がる
認定医になると一般的な開業医や勤務医という働き方だけではなく、他にも様々な活躍の場が広がります。
例えば
- セミナーや学会の講演
- 執筆業
- フリーランス
が挙げられます。
執筆やフリーランス業は自分で営業をしてこのような仕事をすることもありますが、知り合いづてに頼まれることの方が多いです。
獣医師で診療以外の仕事をしている人は稀なので、こういった仕事が出来る人は貴重と言えます。
こういった仕事をしていると飼い主様や他の獣医師などのスタッフから信頼が得られることも多いです。
認定医になるデメリット
認定医になることはメリットばかりのように思えますが、実はデメリットも存在します。
ここでは認定医になることのデメリットもご紹介していきます。
なるまでに時間がかかる
学会に定められている規定の多くの場合は数年以上の臨床経験年数や学会所属歴が必要になることが多いです。
また、審査や試験に落ちることもしばしばあります。
審査や試験に落ち続けることで、認定医になるまでに10年20年かかることもあります。
認定医になるメリットに魅力を感じない人にとってはそれだけ多くの時間を費やさなければいけないことは大きなデメリットになるでしょう。
専門分野以外の診察頻度が減る
認定医になると周囲から「専門性の高い獣医師」として見られます。
例えば循環器科の認定医を取得している獣医師は「循環器科の獣医師」と見られます。
そのため、専門分野以外の診療の依頼は減ることが多く、場合によっては全くなくなる獣医師もいます。
幅広い分野を診療したい獣医師にとっては大きなデメリットになります。
ただし、認定医の中には総合臨床認定医などの幅広い分野を診察できると認められている認定医もあります。
専門分野以外も診療したい方は一度取得を検討してもいいかもしれません。
まとめ
今回は獣医師の認定医について解説しました。
デメリットもありますが、それを上回る大きなメリットがあり、獣医師としての仕事の幅を大きく変える可能性があります。
キャリアに悩まれている方は一度検討してみてはいかがでしょうか。