獣医循環器認定医になるためのロードマップ|認定医になるための就職先選びを解説
「獣医師で獣医循環器認定医を目指しているが何をしたらいいかわからない」
「獣医循環器学会に書いてある認定条件が複雑すぎてわからない」
「獣医循環器認定医になるためどんな動物病院に所属すればいいかわからない」
今回はそんなことを思われている方に獣医循環器認定医になるための条件や条件を達成するためのおすすめのキャリアの歩み方を解説します。
ぜひ最後までご一読いただきご自身のキャリアにお役立てください。
獣医循環器認定医とは
獣医循環器認定医とは動物の循環器に関して専門知識を有し、他の獣医師に対して指導的役割を果たすことができると日本獣医循環器学会に認定された獣医師のことです。
日本全国に獣医循環器認定医は160人(2022年時点)います。
小動物臨床の獣医師は16,541人(2022年時点)と言われているので、約100人に1人の希少な認定医資格と言えます。
循環器認定医になると
- 難病の治療に携わることができる
- 講演、執筆など仕事の幅が広がる
- 転職に有利になる
など様々なメリットがあるため、循環器科に強い獣医師は認定医を目指すことが多いです。
獣医循環器上席認定医が発足された
近年獣医循環器認定医のさらに上の認定医である獣医循環器上席認定医が発足されました。
獣医循環器認定医のうち、動物循環器学の各分野で指導的役割を果たし、後進の育成が十分に可能であると評価される認定医のことを獣医循環器上席認定医と呼びます。
獣医循環器認定医になるには日本獣医循環器学会に5年以上所属しなければいけなかったのに対して、獣医循環器上席認定医になるには10年以上所属しなければいけないなど、さらに厳しい条件が課されています。
認定されることは難しいですが、獣医循環器認定医になって終わりではなく、さらに上のキャリアを歩めるようになったことは素晴らしいことですね。
獣医循環器認定医になるための条件
ここからは獣医循環器認定医になるための条件について解説していきます。
獣医循環器認定医になるためには認定試験の受験資格を得ることと認定試験に合格することの2つが必要です。
認定試験の受験資格
認定試験の受験資格は以下の通りです。
- 一般臨床経験5年以上
- 動物の循環器に関する臨床や研究に修練を積んでいること
- 日本獣医循環器学会の会員で、継続して5年以上の会員歴を有し、この間会費を完納している者
- 動物循環器学のカリキュラムを履修していること
2.については評定基準があり、その評定の中で80点以上取ることが必要です。
点数の基準は以下の通りです。
種別 | 評定項目 | 最大評点 | 評点 | |
発表 | 参加 | |||
論文掲載 | 「動物の循環器」掲載論文 | 30点 | 10(5)点 | |
他誌掲載の循環器学論文 | 5(3)点 | |||
学会活動 | 日本獣医循環器学会 | 50点 | 8(4)点 | 5点 |
循環器学関連の他学会 | 10点 | 4(2)点 | 2点 | |
講習会 | 日本獣医循環器学会主催の講習会・症例検討会 | 40点 | 8点 | 5点 |
※括弧内は連名発表を示します。講習会には認定医講習会を含みません。
4.については34講座の認定医講習会をすべて受講する必要があります。
すべての講座がいつでもどこでも受けられるわけではなく、年間数回開催される講習会に最短2~3年かけて1つずつ参加することが必要です。
認定試験
認定試験で提出する書類は以下の通りです。
- 資格審査のための自己評定表
- 主治医として診断・治療した循環器症例30例の一覧表
- 上記循環器症例30例中10例の症例病歴要約レポート
1.の症例病歴要約レポートは
- 先天性心疾患または心筋症の中から2例以上
- 不整脈例を1例以上
- その他後天性心疾患を含むこと
が必要です。
レポートは所定の様式で、診断、治療の経過について1症例につき1,200字以内にまとめる必要があります。
提出されたレポートは認定委員会によって評点され、合格したものは晴れて獣医循環器認定医になることができます。
獣医循環器認定医になるためのロードマップ
ここまで解説したように獣医循環器認定医になるためには複雑な条件があります。
一般的な動物病院で獣医師をやっていてもその条件をクリアすることはできません。
ここでは獣医循環器認定医になるためにどのような就職先を選び、どのような過ごし方をすればいいのか解説していきます。
認定医講習会参加時に休みが取れる動物病院で働く
獣医循環器認定医の認定試験の受験資格を得るためには認定医講習会を全て受講することが必要です。
認定医講習会は年間数回開催され、同じ内容の講習会は2~3年周期で開催されます。
参加したい認定医講習会を逃してしまうと、次の開催が2~3年後になってしまうため、それだけで認定試験の受験資格を得るまでが長くなってしまいます。
認定医講習会に対して理解してくれ、休みを認め、快く送り出してくれる動物病院を選びましょう。
循環器疾患を診断・治療できる設備が整っている動物病院で働く
獣医循環器認定医になる条件の症例病歴要約レポートに必要なものには
- 先天性心疾患または心筋症の中から2例以上
- 不整脈例を1例以上
- その他後天性心疾患を含むこと
というものがあります。
これを正しく診断・治療するためには以下の機器があることが望ましいです。
- レントゲン撮影装置
- 超音波検査機器
- 血圧計
- 心電図計
循環器疾患に特化した2次診療施設でこれらの機器は揃っていることが多いですが、1次診療施設でこれらの機器がすべてある施設は限られているため、事前に確認しておきましょう。
設備を導入することに積極的な動物病院もあるので、資格を取る意思が強い場合は、そのことを相談してみるといいと思います。
獣医循環器認定医が所属している動物病院で働く
「循環器疾患を正しく診断・治療する」
「評点を上げるために学会発表、論文発表をする」
「認定試験のために症例病歴要約レポートを書く」
これらを未経験で誰の指導もなく、行うことは困難です。
獣医循環器認定医が動物病院にいれば、指導を受けながら認定医取得に向けて動けます。
もちろん指導を受けるということは、その獣医師との人間関係が良好である必要があります。
良好な人間関係を構築できるかどうか動物病院実習の際にしっかり見極めることが重要です。
大学附属動物病院の研修医になる
獣医循環器認定医が所属している動物病院で働くことができたとしても、その数の少なさから複数の獣医循環器認定医が所属している動物病院で働くことは困難です。
知識の偏りをなくすためには複数の獣医循環器認定医が集まるコミュニティでもある大学に所属すると良いでしょう。
大学に所属していれば、一次診療を行う動物病院で対応できなかった難しい循環器症例に携わる機会が増えるのも大きなメリットですね。
ただし、獣医循環器認定医の認定試験の提出書類の中には「主治医として診断・治療した循環器症例30例の一覧表」「循環器症例30例中10例の症例病歴要約レポート」というものがありますが、大学で研修医として経験する症例は主治医にはなれず、この書類に書き加えることはできないので注意しましょう。
勉強する
ここまではどのような環境でキャリアを積んでいくかということを解説しましたが、用意された環境にいるだけでは獣医循環器認定医になることはできません。
最後は自分が努力し、勉強する必要があります。
最近ではオンラインセミナーや電子書籍が流行り始め、獣医療の勉強がしやすい環境が整っています。
様々なものを活用し知識を身につけましょう。
まとめ
獣医循環器認定医になると様々なメリットがあります。
しかし、メリットが大きい分、認定されるまでが難しいです。
何度も挫折しそうになる時が来るかもしれません。
本当に獣医循環器認定医になりたいと思ったのなら、諦めずに頑張りましょう。