獣医師の腎泌尿器科の認定医になるためのロードマップ|就職先選びや働き方を解説
「獣医師で獣医腎泌尿器学会認定医を目指しているが何をしたらいいかわからない」
「獣医腎泌尿器学会認定医になるためにはどのようなキャリアを歩むべきかわからない」
「獣医腎泌尿器学会の認定医と上級認定医の違いがわからない」
今回はそのようなことを思われている方に獣医腎泌尿器学会認定医になるための条件や、おすすめのキャリア選択について解説していきます。
ぜひ最後までお読みいただき、ご自身のキャリアにお役立てください。
獣医腎泌尿器学会認定医とは
獣医腎泌尿器学会認定医とは日本獣医腎泌尿器学会によって制定された認定医制度です。
獣医腎泌尿器学会認定医は認定医、上級認定医の2段階で認定されます。
日本全国に獣医腎泌尿器学会認定医は164人(2022年時点)います。
小動物臨床の獣医師は16,541人(2022年時点)と言われているので、認定医資格を取得することで獣医師としての価値を高めることができます。
獣医泌尿器学会認定医になると
- 腎泌尿器科のスペシャリストになれる
- 多くの腎泌尿器科の症例の治療に携わることができる
- 講演、執筆など仕事の幅が広がる
- 転職に有利になる
など様々なメリットがあるため、腎泌尿器科に興味がある場合は認定医を志す獣医師が多いです。
認定医と上級認定医の違い
獣医腎泌尿器学会認定医制度では認定医および上級認定医の二段階で認定を行っています。
認定医と上級認定医ではそれぞれ以下のような違いがあります。
獣医腎泌尿器学会認定医
腎泌尿器病学を診断・治療する上で最低限身につけておくべき知識を有し、獣医腎泌尿器分野を積極的に勉強していこう、目標を持って知識を習得していこうと考える者
獣医腎泌尿器学会上級認定医
認定医の中から、獣医腎泌尿器分野の将来的なリーダーとなり、より一層の学術の発展にも寄与できる者
専門的な知識を身につけ、学術の発展にも貢献したいと考える場合は、認定医になって終わりではなく、さらに上のキャリアを歩むことができます。
獣医腎泌尿器学会認定医になるための条件
ここからは獣医腎泌尿器学会認定医になるための条件について解説していきます。
獣医腎泌尿器学会認定医資格は、獣医師における他分野の認定医資格と異なり、認定試験はありませんが、学会や認定講習会に参加する必要があります。
認定医の認定要件
認定医の認定要件を獣医腎泌尿器学会認定医と獣医腎泌尿器学会上級認定医に分けて、それぞれ解説していきます。
獣医腎泌尿器学会認定医の認定要件
獣医泌尿器学会認定医の認定要件は以下の通りです。
- 日本の獣医師免許を有すること
- 認定医を申請する日から遡り、3年以上継続して獣医腎泌尿器学会の会員であること
- 認定医制度に参加後、獣医腎泌尿器学会の学術集会に3回以上参加していること
- 認定医制度に参加後、獣医腎泌尿器学会の認定講習会に10回以上参加していること
- 認定医制度に参加後、認定医を申請する日から遡って5年以内に業績実績単位を13単位以上取得していること
認定医の認定に必要な業績実績単位は以下の通りです。
必要単位数 | 13単位 |
学術集会参加単位 | 3単位以上(1回の参加ごとに1単位付与) |
学会認定講習会への参加単位 | 10単位以上(1回の参加ごとに1単位付与) |
獣医腎泌尿器学会上級認定医の認定要件
獣医腎泌尿器学会上級認定医の認定要件は以下の通りです。
- 認定資格を有していること
- 上級認定医を申請する日から遡り、6年以上継続して獣医腎泌尿器学会の会員であること
- 上級認定医制度に参加後、獣医腎泌尿器学会の学術集会に3回以上参加していること
- 上級認定医制度に参加後、獣医腎泌尿器学会の認定講習会に15回以上参加していること
- 上級認定医制度に参加後、学術集会にて口頭発表を1回以上行っていること
- 上級認定医制度に参加後、獣医腎泌尿器学会学術誌において筆頭著者(あるいは責任著者)として1報以上の論文発表を行っていること
- 上級認定医制度に参加後、上級認定医を申請する日から遡って6年以内に業績実績単位を20単位以上取得していること
必要単位数(認定医取得後) | 20単位 |
学術集会参加単位 | 3単位以上(1回の参加ごとに1単位付与) |
学会認定講習会への参加単位 | 15単位以上(1回の参加ごとに1単位付与) |
学術集会での発表単位(筆頭発表) | 1単位以上(発表1回につき1単位付与) |
学会誌での論文発表単位(筆頭発表) | 1単位以上(発表1回につき1単位付与) |
論文発表については獣医腎泌尿器学会学術誌に加えて、日本獣医師会雑誌あるいはPubMed収載誌への発表でもよいとされています。
獣医泌尿器学会認定医の特徴として、試験がないことが挙げられます。
認定医を目指す獣医師は計画的に準備を進め、努力をしていくことで短期間で認定医を取得することが可能です。
認定医を取得した上で、さらに腎泌尿器分野でリーダーシップを発揮し、学術の発展に貢献したい方は上級認定医を目指しましょう。
獣医泌尿器学会認定医になるためのロードマップ
ここまで解説したように獣医泌尿器学会認定医になるためにはいくつかの条件があります。
一般的な動物病院においても腎泌尿器科の症例は多いですが、認定医になるためにどのような就職先を選び、どのようなキャリアを歩むべきかを解説していきます。
認定講習会参加時に休みが取れる動物病院で働く
獣医腎泌尿器学会の認定講習会は年数回開催され、それぞれで行われる講習会の内容は異なります。
認定医の認定要件に必要な単位数を取得するためには、講習会に複数回参加することが必要です。
講習会はオンラインで実施される場合もありますが、対面で行われることもあります。
講習会に参加できないと、認定医資格取得までに時間がかかってしまうので、講習会の参加に理解を示してくれ、休みを認めてくれる病院を選びましょう。
認定医取得の意欲がある方は、就職前に事前に相談しておきましょう。
大学附属動物病院の研修医になる
大学病院で研修医として勤務することは、幅広い症例に触れ、高度な技術を学ぶ絶好の機会です。
大学附属病院では一次診療では対応できなかった難しい症例に携わることができ、獣医師としてのスキルアップにつながります。
また、腎泌尿器分野を専門とする獣医師の下で研修を受けることで、より専門的な診断や治療に触れることができます。院で働くことで腎泌尿器分野を幅広く学ぶことができます。
認定医を取得し、自身も手術を行えるようになると
上級認定医を目指す場合は論文執筆や学会発表といった学術的な知識も必要になるので、指導医に助言を求めることも可能です。
腎泌尿器疾患を診断・治療できる設備が整っている病院で働く
腎泌尿器学会上級認定医を目指す場合は論文の執筆や学会発表が必要になります。
論文執筆や学会発表の際は、学術的に正しい診断・治療が求められます。
腎泌尿器疾患は尿検査や画像検査、血圧などの様々な検査を組み合わせて診断・治療を行っていきます。
これらの検査が不十分だと正確な診断・治療はできない場合があるので、事前の病院見学で設備が整っているかを確認しておきましょう。
腎泌尿器の外科を行っている動物病院で働く
腎泌尿器分野は猫の慢性腎臓病をはじめとする内科疾患メインだと思われがちですが、最近では猫の尿路結石が増えており、外科治療が必要になる症例も多く存在します。
猫の尿路結石の手術は専門的な設備や技術が必要なので、手術を実施できる病院は限られています。
内科治療だけでなく、外科治療も行っている病院で働くことで獣医師としてさらにレベルアップできます。
勉強をする
認定医資格取得するためには試験はありませんが、認定医として、より成長するためには知識を深めていく必要があります。
学会やセミナーなどに参加して新しい知識を学んでいきましょう。
専門性を高めることで、腎泌尿器症例を診察・診断する機会が増え、論文執筆などの役に立ちます。
また、実際に手を動かす外科実習に参加することで技術を身につけることもできます。
まとめ
獣医泌尿器学会認定医になることには様々なメリットがあります。
近年、犬に比べ猫の飼育頭数が増えてきています。猫は慢性腎臓病などの腎泌尿器疾患に罹患する割合が大きいので、腎泌尿器の認定医を取得することで獣医師としてのニーズが高まります。
腎泌尿器分野に興味がある獣医師は積極的に認定医資格の取得を目指すことで、よりよいキャリアを歩んでいきましょう。