【院長先生に聞いてみた】冨永 博英先生 福岡中央動物病院(福岡県福岡市)院長
オンラインセミナーでは得られないもの
今はコロナの影響によりオンラインで学会・セミナー参加当たり前になってきていますが、私はオフラインのイベントから頂いたご縁により育てられました。オフラインで集まることの良さは、人と人とが直接繋がれることです。学会には懇親会が行われることがあり、面識のない方ばかりですと参加するのが少し億劫に感じることもありますが、参加してみると結果的に様々な方とお繋がりができ、得るものが多いです。相談相手ができることで悩みを共有できるようになるほか、他の先生方が何を勉強をしていて、どういうお人柄なのかが分かると、症例を紹介しやすくなります。自分の手に負えない症例を他施設に送る際、送った先の先生がどういう方なのか把握できている方が安心できます。また、懇親会の時に貴重なのは、表に出せない情報に触れられることです。例えば、学会には出せない「他の先生が実際につまずいた症例」を聞けたりする。「うまくいく方法」を学ぶことも大事ですが、「うまくいかない方法」を学ぶことも、失敗を避けるうえで有用です。うまくいかない方法が理解できていると、「ここまでは自分で対応できる/できない」という判断がつくようになるので、他院へ紹介すべきタイミングがわかってきます。
二次診療施設で得た知識・繋がり・自信
私がお世話になっている二次診療病院が県外にあるのですが、そちらでは紹介した側の手術に立ち会うことができます。尊敬する先生の手術を横で見られることも大変勉強になるのですが、自分が紹介した子以外にも他の先生が紹介した子の手術も見られるので、他の先生がどう悩んだのかを知ることができます。また、手術中・後には他の先生たちとある意味同志として意見交換をするので、人間関係が構築されやすいメリットもあります。
CT・MRIを入れるきっかけもオフラインで得た人間関係から
CTとMRIを導入していますが、これもオフラインで仲良くなった先輩獣医師からの影響です。様々な学会やセミナーに参加し、他の方々との交流をする中で、15年位前に自院もCTを導入することを考えるようになりました。そのことを大阪で先進的な病院の先生に相談すると、機械の使い方や読影方法を月に1回無償で教えるから、是非来なよ!とお誘いを頂きました。ありがたく学ばせていただき、今ではMRIも導入するに至っています。このように様々な方に育てられ当院のレベルは向上し続けてきたため、昔は自分の病院だけに患者さんが来れば良いという考えでしたが、今では地域全体での医療レベルを上げるために自分に何ができるのだろうと考えるようになりました。できれば生涯現役で働きながら、自分を育ててくれたこの業界への恩返しを行うのが今の目標です。このお仕事は責任も重くストレスがか
かるのも確かですが、それ以上にやりがいを得ることができます。自分の知識や技術が向上することで自身が成長すればさらに多くの動物や人を救うことができ、今以上に社会に貢献できるようになりますが、そう考えると努力するモチベーションが湧いてきます。これまでの人生の中で最も充実していた時を聞かれると間違いなく「今」だと断言できるのですが、今後も様々な人との関係性の中で自分を、 病院を高めていけたらと思っています。オンラインで簡単に情報を得られるようになった今だからこそ、 軽視されがちなオフラインの魅力を次の世代の方々にも認識していただき、その時々でオンライン・オフラインをうまく使い分けることで、皆さんの医療人生がより充実したものになることを願っています。
PROFILE
酪農学園大学卒業。札幌市の動物病院にて勤務後、福岡市内にて開業。日本臨床獣医学フォーラム幹事、福岡市獣医師会 理事を務める。現在も様々な学術学会に参加。経営と臨床で多忙を極める中、お盆とお正月は家族でゆっくり過ごすのが近年のルーティーン。福岡は美味しいものが多く、大好きな所。