【院長先生に聞いてみた】藤本 晋輔先生 大津動物クリニック(熊本県菊池郡)院長

【院長先生に聞いてみた】藤本 晋輔先生 大津動物クリニック(熊本県菊池郡)院長

放任の修行時代と研修医時代

私の父親も獣医師だったこともあり、子供ながらに将来は獣医師になりたいと思っていました。 獣医学部進学後、就職は共済を希望していましたが落ちてしまい、たまたま大学の先生から紹介された一次
動物病院へ。フラッと就職先を決めたように、強い意志があって小動物臨床に進んだわけではありませんでした。就職した病院は当時は60過ぎの院長と私より少し年上の勤務医がいて、私が3人目の獣医師でしたが、私が入社してすぐに先輩勤務医が退職。意図せずして歳の離れた院長と診療を担当することになりました。 院長には感謝していますが、当時の時代背景もあり、院長が私に直接指導してくれることは殆どありませんでした。頼れるのが自分しかいないので、ある意味非常に鍛えられました。4年間勤めた後は外科ができるようになりたいとの思いから、当時数多くの外科症例を扱っていた麻布大学で研修医として勤務し、多くの症例に触れることができました。また、この時に生涯の恩師の渡邉俊文先生にお会いでき、私の外科技術の基礎を作っていただきました。

博士課程がもたらしたもの

外科でしか治せない症例を数多く見てきた私は外科の奥深さに魅了され、外科の道に邁進します。地元熊本に帰ってきてからは一般診療をやりながら宮崎大学の博士課程に進学。当時の動物病院の教授
の鳥巣至道先生にご指導頂き、およそ6年間かけて博士号を取得しました。博士課程の勉強の中ではロジカルに物事を考えるクセがつき、また、学会発表の際のルールを覚えることができました。 今でも年間で1〜2件は学会発表を行うようにしていますが、私が博士課程を修了する中で身につけた、事実を積み重ねて論理的・客観的な考えを発表する力はスタッフ教育の面でも大きく役立っています。あと、博士号を取得したことで、先輩方からの見られ方も少し変わったのも地味に嬉しいポイントです(笑)。

外科はきちんと段階を踏めば、難しくない

私の外科技術のピークは今の年齢、もしくは数年先くらいなのではないかと思っています。当院にはCTとMRIがあるので、検査から手術まで今はしっかり対応できていますが、 今後の課題はどうやって外科に強い病院を作り続けられるか、 だと思っています。今取り組んでいることは、無理しない勤務体系でありながら技術を伸ばす仕組みづくりです。当院では外科手術が月に100件前後と多く、朝から始めて午後の診療前には全て終わらせるようにしています。こうすると、術後の様子を夕方には確認できるので、夜になって「あの子大丈夫かな?」と心配して見に行く回数が減ります。実力向上のためにはあとは実践あるのみです。ただ見ているだけだとオンラインセミナーを見ているのと変わらないので、許容できる範囲内で触らせてみることを大事にしています。外科をやるには内科・解剖学・生理学など様々な知識が必要ですが、段階を踏んで理解度を深めていけば少しずつできるようになります。当院では手術の前に診断、術前計画、術後管理に関してプロセスごとに理解度を確認しますので、自分の理解度を都度把握できるようにしています。 こうすることで、正しい知識と自信を付けてもらい、手術のハードルを下げ、誰が手術をしても同じ結果が出るようにできると考えています。

PROFILE

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)卒業後、都内動物病院で勤務。麻布大学付属動物病院前科研修医として勤務したのち、父親が経営していた熊本の動物病院を新築移転し副院長に就任。2015年に院長に就任後、宮崎大学大学院医学獣医学総合研究科(博士課程)修了・博士号取得。二児の父。趣味はテニス。思ったことはその場で伝え、引きずらないように心掛けている。

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