2024.10.01 コラム記事

動物病院の広告制限が変わることによる獣医師のキャリア形成の変わり方

動物病院の広告制限が変わることによる獣医師のキャリア形成の変わり方

獣医師の皆さんは動物病院の広告制限が見直されたことを知っていますか?

この変更は、単なる広告ルールの変更ではなく、獣医師としてのキャリア形成に大きな影響を与える可能性があります。

本記事では、広告制限の見直しがもたらす新たな機会と、それに伴うキャリア形成について詳しく解説します。

ぜひ一読していただき、今後の獣医師としてのキャリアの参考にしてください。

獣医療法における広告とは

獣医療法における広告とは以下の3点をすべて満たすものを言います。

  1. 誘引性

ペットの飼い主などを誘引する意図があるもの

  1. 特定性

獣医師の氏名または診療施設の名称が特定可能であるもの

  1. 認知性

一般人が認知できる状態であるもの

上記3点のうち、どれか1つでも満たしていないものは「広告」には該当しません。

具体的に広告に該当しうるものと、通常、広告には該当しないものの代表例をそれぞれ挙げていきます。

  • 広告に該当しうるもの
    • 新聞・雑誌広告
    • 広告看板・ポスター
    • ダイレクトメール
    • 動画共有サイト
    • ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)

上記のものは一般的に、意図せずに飼い主などの目に入るものが当てはまります。

  • 通常、広告には該当しないもの
    • 論文・学会発表など
    • 新聞・雑誌などの記事
    • 体験談・口コミ
    • 診療施設内掲示物、診療施設内で配布するパンフレットなど
    • 診療施設などのウェブサイト
    • 獣医師などが個人で開設するブログ、SNSなど

ただし、上記のものでも広告の3要件に当てはまるものは広告とみなされます。

例えば診療施設などのウェブサイトでも、ウェブサイト広告やバナー広告に連動するもの、SNSなどで不特定多数に拡散するものなどは広告に当てはまることがあるので、注意が必要ですね。

動物病院の広告制限見直しの背景と概要

令和6年4月1日から獣医療に関する広告制限が変わりました。

「なぜ動物病院の広告制限が見直されることになったの?」

このように思われる方は多いと思います。ここでは、広告制限が見直されることになった背景をいくつか紹介します。

  1. 獣医療技術の高度化・多様化
  2. 獣医師の専門性の高まり
  3. 愛玩動物看護師制度の開始
  4. 情報発信媒体の変化

これらの獣医療を取り巻く状況が大きく変化しているため、動物の飼い主などが提供される獣医療サービスを正しく理解し、適切に選択できるように広告制限の見直しが行われました。

獣医師の専門性が広告可能に

広告制限の見直しによって、獣医師の専門性を広告することが可能になりました。これは、獣医師のキャリア形成にとって非常に重要な変更です。専門性を表に出すことができるようになることで、以下のような利点があります。

  • 自身の専門分野をアピールしやすくなる
  • 特定の分野でのキャリアを築きやすくなる
  • ペットの飼い主が専門性を持つ獣医師を探しやすくなる

専門性を持つ獣医師であれば、その専門性を広告に明記できるようになりました。

これにより、その分野で悩む飼い主からの需要が高まる可能性があります。

専門性認定の仕組み

獣医師の専門性が広告可能になりましたが、誰もが自由に専門性を広告できるわけではありません。

新しい広告制限では、農林水産大臣に指定を受けた団体が認定要件を満たす獣医師に専門性を認定するという仕組みになります。

このプロセスを理解し、自身のキャリアプランに組み込むことが重要です。専門性の認定を受けるための要件や必要な経験、学習内容を早めに把握し、計画的にキャリアを積んでいくことが求められます。

農林水産大臣の指定を受けて獣医師の専門性に関する認定を行う者の指定等の基準について

動物病院における診療内容の詳細な広告

診療内容に関する広告可能な範囲も大幅に拡大されました。これまで限定的だった診療行為の広告が、一般診療から高度な診療まで幅広く可能になります。

ただし、以下の情報を併記する必要があります。

  • 飼い主などが広告内容について照会可能な問い合わせ先
  • 通常必要とされる診療内容、費用などの情報
  • 診療に係るおもなリスク、副作用などの情報

これらの見直しは、獣医師にとって広告できる診療の幅が広がるメリットもありますが、同時に、分かりやすい説明能力や透明性の高い情報提供能力が求められます。

診療内容の透明性を生かしたキャリア形成

今回の見直しにより、これまでの広告では制限されていた高度な診療行為や特殊な治療法も、適切な情報提供を行うことで広告可能になります。

これにより、獣医師にとって以下のような機会が生まれる可能性があります。

  • 自身の技能や経験のアピール
  • 特殊な治療法の普及促進
  • 新たな診療分野の開拓

自身の技能をアピールすることで、より多くの症例を経験し、さらなるスキルアップを図ることができます。

例えば、腫瘍学に特化したい獣医師であれば、がん治療に関する詳細な情報を広告することで、その分野での評価を高めることができます。同時に、その分野での継続的な学習や技術向上がより重要になるため、計画的なスキルアップが求められますね。

オンラインでの情報発信の活用

最近では、動物病院のウェブサイトやSNSなどのオンライン上で情報を集める飼い主が増加しており、オンラインでの情報発信の重要性が増してきています。

ウェブサイトやSNSを活用した情報発信は、単なる広告ではなく、動物病院と獣医師自身の専門性や特色などを伝える重要なツールとなります。

オンラインでの情報発信として以下のような戦略が考えられます。

  1. 専門知識の発信

診療に関する有益な情報を定期的に発信し、専門家としての地位を確立する

  1. 症例報告

興味深い症例を紹介し、自身の経験や技術をアピールする

  1. 継続的な学習の可視化

学会参加や研修受講などの情報を共有し、継続的な学習をアピールする

これらを継続的に発信することで、自身や所属する動物病院のブランドを構築できます。

ただしオンライン上では、適切な情報発信を行うデジタルリテラシーが求められます。

新しい広告制限下での獣医師のキャリア形成

ここまで解説してきた変更点を踏まえ、新しい広告制限下での獣医師の効果的なキャリア形成について考えてみましょう。

専門性の明確化と強化

専門性を広告できるようになったことを最大限に活用しましょう。自身の興味のある分野や得意分野を明確にし、その分野での専門性をアピールすることが重要です。積極的に自身の専門性をアピールすることで、自身の得意分野に関する悩みを持った飼い主に認知してもらうことができます。強みを活かして飼い主の不安や困っていることを解決していくことで提供する獣医療の質の向上につながります。

また、飼い主の満足度も高まり、飼い主との信頼関係をより深く構築できます。

同時に、専門性を維持・向上させるための継続的な学習が重要ですね。

情報発信を通じて影響力を獲得する

ウェブサイトやSNSを活用した情報発信は、今後ますます重要になります。定期的に有益な情報を発信しすることで、効果的に飼い主へ動物病院や自身の特色や強みを伝えていきましょう。オンライン上での存在感を高めることで、自身の獣医師としての価値を高めることができます。

また、ウェブサイトやSNSなどで動物病院の診療内容や、日常の様子を発信することで飼い主に安心して動物病院を受診してもらえるようになり、信頼を得やすくなるでしょう。

適切な情報発信のためのデジタルリテラシーを向上させ、発信する情報を常にアップデートしていきましょう。

まとめ

動物病院の広告制限の見直しは、獣医師のキャリア形成にも大きな変化をもたらします。この変化を単なる規制の変更としてではなく、自身のキャリアを飛躍させるチャンスととらえることが重要です。

専門性の明確化、診療内容の透明性向上、オンライン上での影響力の強化など、新たな可能性が広がっています。

これらの変化に積極的に対応し、自身の強みを最大限に活かすキャリア戦略を構築することで、獣医師としての価値をより高めることができます。

変化に柔軟に対応し、常に学び続ける姿勢を持つことで、獣医師として更なる成長と成功を実現できるでしょう。

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