獣医師の就職先選びの決め手|「東京と地方」地域医療の実態比較
獣医師の求人は全国各地さまざまな病院で募集が出ていますが、東京と地方で働くことにはどのような違いがあるのでしょうか?この記事では転職や就職を考えている獣医師の皆さまに向けて、東京と地方での就職の特徴や地域医療の実態を比較し、それぞれのメリット・デメリットを詳しく解説します。
是非最後までお読みいただき、今後のキャリア形成にお役立てください。
【東京と地方】獣医師の求人の傾向
はじめに東京と地方の獣医師の求人の傾向を解説していきます。「地方」というと意味合いが広くなりますが、地方都市を除いた地域をイメージしていただくと良いでしょう。
給与水準の地域差
東京と地方での、獣医師の給与水準に明確な差はありません。
一般的なサラリーマンの給与を例とすると、東京の方が給与水準は高い傾向にあると思われますよね。しかし、獣医師の給与は病院を運営する企業母体、病院単位で異なります。
地方の中核病院で、一日の診療件数も多く幅広い症例を多く受け入れている医院は給与が高い傾向にあります。獣医師という職業柄「最低賃金の差」という地域格差の影響は無いでしょう。
勤務環境
勤務環境は、東京と地方で異なります。
令和5年に農水産省が調査した「飼育動物診療施設の開設届出状況」によると、全国の動物病院数は12,706院。そのうち東京にある動物病院は1,882院と、約15%の動物病院が東京にあることが分かりました。東京では医療の分業化や動物病院の競争の激化が進んでいます。その影響もあり、東京と地方では勤務環境にそれぞれ以下の特徴が挙げられます。
東京の動物病院
- 大学病院も多く、1次診療施設・2次診療施設がはっきり分かれている
- 専門医・認定医が在籍する専門性の高い病院が多い
- 土地的に狭い病院が多い
- 交通の便が良く通勤が便利
地方の動物病院
- 大学病院が少ないためCTやMRIなどを保有する個人病院がある
- 地域に病院が少ないため幅広い診療を実施している
- 夜間診療や救急対応を行う病院が少ない
- 都市部ほど交通の便が良くない
獣医師の需給バランス
東京、地方共に獣医の需要は絶えません。
東京は1次・2次を含めさまざまな医療機関が集中していることや、研修制度が充実した企業病院などが多いこと、選択肢の多さから東京を希望する獣医師は多いようです。
一方の地方は、一部の都市を除き深刻な獣医師不足が問題視されています。院長の高齢化、事業承継者の不在など動物病院の存続危機が地域の動物医療に影響をもたらしています。
【東京と地方】地域医療の実態について
東京と地方では地域医療にさまざまな違いがあります。こちらではそれらの違いを解説していきます。
症例数と専門性の違い
東京は大学病院の数が多く2次医療機関として、高度な医療設備を保有し近隣の病院から難治症例を受け付けています。その他、特殊医療機関や画像診断センター、夜間救急病院など高次医療施設が多く、1次診療・2次診療と動物医療の分業化が進んでいます。そのため、就職先の動物病院によって症例数や診療の幅が大きく異なるでしょう。
地方では、動物病院の数が少なく、ひとつの動物病院が地域の動物医療に貢献する割合が高い傾向です。そのため、獣医師ひとりひとりに幅広い知識と技術が求められます。
スキルアップの機会
東京では獣医学セミナーや学会が開催されることが多いです。地方獣医師と比較すると東京の獣医師は学会などへの参加が容易にできるでしょう。また、東京では動物病院・獣医師の数も多く学術交流の機会も多くあります。しかし、臨床現場においては獣医師の人数が多いかわりに診療機会や外科手術の執刀機会が得られづらい傾向にあるようです。
また、近年では獣医学セミナーや学会などもオンラインで受講できるようになってきました。そのため、以前と比較すると最新の医療知識を得る機会は地域格差は無いようです。
地域特性による診療内容の違い
動物病院の診療内容は、地域特性によってさまざまな違いがあります。
東京の動物病院は、大学病院をはじめとした高度な医療設備や専門的な治療を提供する大規模な施設が多く存在します。CTやMRIなどの最先端機器を備え、難しい症例にも対応できる体制が整っています。
一方、地方の動物病院では一般的な診療を中心とした中小規模の施設が多く、高度な設備を持つ病院は限られています。地域に密着した診療を行い、予防医療や一般診療に力を入れている傾向があります。
【東京と地方】それぞれのメリット・デメリット
東京と地方での動物病院への就職には、それぞれ以下のようなメリットとデメリットがあります。
東京の動物病院:メリット
- 就職先として選べる選択肢が多い
- 大学病院や特殊医療機関などの2次診療施設が多い
- セミナーや学会に参加できる機会が多い
東京の動物病院:デメリット
- 獣医師が多いためチャンスがもらいづらい(特に外科の経験がしづらい)
- 土地的に狭い病院が多い
- 1.5次診療を行う病院が少ない
地方の動物病院:メリット
- 地域に根ざした診療ができる
- 幅広い診療経験を積める
地方の動物病院:デメリット
- 最新の医療技術や設備に触れる機会が少ない
- キャリアアップの機会が限られる場合がある
まとめ
本記事では獣医師の皆さまが就職先を選ぶうえでの決め手となる「東京と地方」の地域医療の実態比較を解説しました。
獣医師として東京と地方のどちらで働くかは、個人の価値観やキャリアプランによって大きく異なります。東京では高度な医療技術と専門性を追求できる環境がある一方、地方では地域に密着した診療と幅広い経験を積むことができます。
転職を考える際は、給与や勤務条件だけでなく、自身のキャリアビジョンや生活スタイルとの適合性を十分に検討することが重要です。また、実際に働いている獣医師の方々の体験談を聞くことも、判断の助けになるでしょう。
本記事を参考に、自身に合った病院と出会えるよう就職活動を進めていきましょう。