2024.06.20 コラム記事

獣医師が外科の技術を身につける方法|外科医のキャリアプランを解説

獣医師が外科の技術を身につける方法|外科医のキャリアプランを解説

獣医師が外科技術を身につけることには大きな意味があります。

開業する獣医師は一人で様々な症例を治療する必要があるため、幅広い外科技術が必要です。

専門的な外科技術を身につけ、様々な動物病院に呼ばれながら外科医として生きていく獣医師もいます。

今回は、獣医師がその外科技術をどのように身につければいいのかを解説していきます。

ぜひ最後までお読みいただき、ご自身の技術を磨くことにお役立てください。

外科にも様々な分野がある

動物病院の外科といえば、かつては去勢手術や避妊手術が主流でした。しかし近年では、獣医療の高度化に伴って、様々な分野が派生しています。

例えば、脳外科、心臓外科、腫瘍外科、泌尿器外科、消化器外科、腹腔鏡外科などは高度化した外科です。

一次診療施設の開業を検討している場合は、専門分野に特化した外科技術を学ぶ必要はないかもしれません。

しかし、二次診療施設で外科医として活躍したい方や、他の動物病院から指摘されるような外科医を目指したい方は、専門的な外科技術を身につけた方が良いでしょう。

専門的な外科技術を身につける場合は、多分野を同時進行で学ぶことは現実的に難しいため、ご自身が興味のある専門分野を一つ確立することが望ましいです。

外科は経験が積みにくい

外科は内科と比べて経験が積みにくいと言われています。

そのため外科医になりたくても、経験を積めずに挫折してしまう獣医師が後を絶ちません。

なぜ外科の経験を積みにくいのかを解説していきます。

症例数が少ない

外科は内科症例に比べると、症例数が非常に少ないです。

1日の内科症例の診察件数が30~50件なのに対して、手術が1~2件という動物病院も多いのではないでしょうか。

単純に外科が必要になる症例が、内科と比べて少ないということも原因の一つです。

しかし他にも、本来手術が必要な症例であっても、飼い主様が手術をしないという選択をすることで、さらに外科の症例数が少なくなってしまっています。では、飼い主様は手術に対してどのような不安を抱えているのでしょうか。

リスクが高い

手術を行うには麻酔が必要になります。

一般的に、麻酔によって死亡懸念のある病状が、犬では0.17%~0.65%、猫では0.036%~1.05%で発生すると言われています。

人の医療で麻酔が原因で死亡してしまうのは10万人に1人と言われています。

犬と猫の麻酔リスクは人に比べて非常に高いということですね。

手術を行うには、この麻酔リスクを負った上で臨まなければいけないため、本来手術が必要な症例でも手術をせずに内科治療を行う場合もあります。

医療費が高額

内科症例に比べて外科症例の医療費は高額になります。

手術の種類によって変わりますが、一般的な腹部の手術であれば10~50万円くらいになるものが多く、専門的な手術であれば100万円を超えることもあります。

執刀したい人が多い

外科の経験を積むことが難しい理由の一つに、外科症例の数に比べて執刀をしたい獣医師が多いということが挙げられます。

冒頭に記載したように外科技術を身につけると獣医師としての仕事の幅が広がるため、多くの獣医師が手術経験を積みたいと考えます。

特に獣医師数の多い、大きな動物病院だと自分にチャンスが回ってくるまで非常に時間がかかります。

他の獣医師を差し置いて自分が執刀することは、並大抵の努力では実現できないでしょう。

外科技術を身につける方法

外科技術はただ動物病院にいても身につけることは難しいです。

新卒の獣医師の場合は避妊手術や去勢手術から執刀を初めていく病院がほとんどですが、それ以上の難易度の執刀を行えるようになるためには、計画性を持って技術習得に励まなければなりません。

外科技術を身につけるためには以下の行動をすると良いでしょう。

生体を使わないで練習する

外科手術を経験できる機会は非常に少ないため、生体を使わずに練習しておくことが重要です。

実際に手術を行う時に症例で練習することは倫理的に許されないため、避けましょう。

生体を使わない練習で最も効果的なものは縫合練習です。

医療器具メーカーから販売されている動物の皮膚を模した縫合練習キットを使って、縫合練習をすることができます。

もし、縫合練習キットが手に入らない場合はスーパーで買った鶏肉などで練習する方法もありますので、試してみましょう。

解剖学を勉強する

外科技術を発揮するためには動物の体の構造を正確に把握する必要があります。

どこにどの臓器があるのか、どこに重要な血管があるのかなどを把握することで、手術の正確性や安全性が増します。

何から外科の勉強をすればいいのか悩んでいる方は、まずは解剖学から勉強を始めると良いでしょう。

動画教材で学習する

現在では対面で行うセミナーの数は少なくなり、動画を用いたwebセミナーが非常に多く開催されるようになりました。

外科医目線の手術動画や手術現場で役立つ知識を盛り込んだ動画コンテンツもあるので、自宅で効率よく外科について学べるようになりました。

無料で見られるものも多数ありますので、まずは試聴してみましょう。

指導医のいる動物病院に勤務し、指導医とともに助手に入る

どんな外科医も最初のキャリアは助手から始まります。

指導医とともに手術に入ると、間近で技術を勉強することができます。

指導を受けていく過程で、指導医の信頼を勝ち得ることができれば、手術中の一つの行程だけ任せてもらえるなど、実際に手術の一部を自分の手で行うことができます。

徐々に任せてもらえる行程が増え、指導医から執刀可能と評価されると、今度は指導医が助手に入って自分の執刀を補助してくれる機会をくれるようになります。

そうして徐々にスキルアップしていくのが、外科技術を身につけるための王道の方法ですね。

就職する動物病院を探す際は、その動物病院に外科医の指導実績があるかどうかを確認するようにしましょう。

まとめ

獣医療の高度化に伴い、動物病院の外科の需要はますます増えると思われます。

しかしその需要に対して、十分な外科技術を身につける方法は確立されていません。

外科技術を身につけようと思っているけどなかなか身につかない方は、

  • 自分の状況から考えて、できることからやる。
  • 今の環境で難しいと判断した場合、指導を受けられる動物病院に転職する

ということを念頭において行動するのはいかがでしょうか。

今回の記事を参考にご自身の外科技術を磨いていただき、もしキャリアに悩まれたら転職を検討するのが良いですね。

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