獣医師の腫瘍科の認定医になるためのロードマップ|就職先選びや働き方を解説
動物病院で診察する犬猫の死亡原因の第一位は悪性腫瘍と言われています。
そのため獣医療業界では常に腫瘍科の獣医師のニーズが高いです。
今回は腫瘍科の認定医である獣医腫瘍科認定医になるための条件やキャリアの選び方について解説していきます。
ぜひご一読いただき、ご自身のキャリアにお役立てください。
獣医腫瘍科認定医とは
獣医腫瘍科認定医は日本獣医がん学会によって作られた制度です。
獣医腫瘍科認定医になると犬猫の腫瘍科の専門知識、一般臨床的知識や実践力を備えた獣医師になったと認定されたことになります。
獣医腫瘍科認定医はⅠ種とⅡ種がありますが、2023年5月現在日本全国でⅠ種が51名、Ⅱ種が424名います。
獣医腫瘍科認定医になると
- 難病の治療に携わることができる
- 講演、執筆など仕事の幅が広がる
- 転職に有利になる
など様々なメリットがあるため、腫瘍科に興味がある獣医師は認定医を目指すことが多いです。※引用元
Ⅰ種とⅡ種の違い
日本獣医がん学会の公式HPにⅠ種とⅡ種の違いについて以下のように記載があります。
認定医Ⅰ種
腫瘍診療のための専門知識及び一般臨床知識を有し、且つ実践的に診断・治療を行う能力を備える者
認定医Ⅱ種
腫瘍診療のための専門知識及び一般臨床知識を有する者
要約するとⅠ種の方がⅡ種と比べてより知識や技術に優れた認定医ということですね。
その分Ⅰ種の方が認定に至るまでの難易度が高く設定してあります。
獣医腫瘍科認定医になるための条件
獣医腫瘍科認定医になるためには様々な条件があります。
獣医腫瘍科認定医になる条件は以下の通りです。
種別 | 受験資格 | 認定条件 | |
I種 | 日本獣医がん学会会員で獣医師免許を有する者 | 認定委員会が行う口述・実技試験等 (模範症例の診断・治療) に合格した者 | |
認定医Ⅱ種資格を有する者 | |||
II種 | 日本獣医がん学会会員で獣医師免許を有する者 | 以下のいずれかに 該当する者 | 認定委員会で推薦され、所定の審査に合格した者 |
認定制度で定めた所定の認定医Ⅱ種講習会を受講した者 (受講済印の有効期限は別途定める) | 認定医Ⅱ種試験(筆記試験) に合格した者 |
獣医腫瘍科認定医の特徴として、臨床経験年数や日本獣医がん学会の所属期間は条件に含まれていない点が挙げられます。
能力や努力次第では短期間で認定医を取得することが可能です。
Ⅱ種では講習会の受講を受け、認定委員会からの推薦・審査か認定医Ⅱ種試験のいずれかに合格する必要があります。
Ⅰ種ではⅡ種を取得し、認定委員会が行う口述・実技試験等に合格する必要があります。※引用元
獣医腫瘍科認定医になるために選ぶべきキャリア
獣医腫瘍科認定医になるためには動物の腫瘍についての知識や経験を増やし、条件をクリアする必要があります。
動物の腫瘍は非常に多いので、どんな動物病院に行ってもある程度は経験を積むことができます。
しかし、獣医腫瘍科認定医の条件をクリアするためには、そこで得られた知識や経験が正しいものである必要があります。
ここでは獣医腫瘍科認定医になるためにはどのようなキャリアを選ぶべきかを解説していきます。
獣医腫瘍科認定医が所属している動物病院で働く
獣医腫瘍科認定医Ⅱ種の試験には、学会が定めた診察ガイドラインと学会から出版されているテキストがあります。
認定試験の内容はそのガイドラインとテキストから検討・出題されます。
当然のことながら獣医腫瘍科認定医の人はその試験を合格しているので、実際の診察でもガイドラインに沿った診断・治療を行います。
つまり、普段の診察内容から指導を受けながら認定試験の勉強ができるということですね。すでに獣医腫瘍科認定医の資格をもつ先生がいる動物病院で務めることで、正しい診療スキルを学べるだけでなく、認定医の試験勉強もできるということです。
ただし、指導を受けるということは、その獣医師との人間関係が良好である必要があります。良好な人間関係を構築できるかどうか動物病院実習の際にしっかり見極めることが重要です。
腫瘍の三大治療方法を経験できる動物病院で働く
日本獣医がん学会のガイドラインでは腫瘍の三大治療方法は外科手術、化学療法、放射線療法と言われています。
これらの治療に携われる動物病院で働くと知識や経験が身につきやすくなります。
検査機器がある動物病院
腫瘍の三大治療のどれを行う場合でも正確な腫瘍疾患を診断することが基本となります。経験や知識が豊富な獣医師がいるというだけではなく以下の機器があると望ましいでしょう。
- 血液検査機器
- レントゲン検査装置
- 超音波検査装置
- CT検査装置
- MRI検査装置
特にCT検査装置、MRI検査装置を備えている動物病院は少ないため、事前にチェックしておきましょう。
外科手術ができる動物病院
腫瘍の外科手術をするためには、腫瘍外科に執刀できる獣医師が必要です。その病院の手術件数や手術実績は事前に確認しておきましょう。
また、外科の技術を身につけるためには自分で執刀することが必要です。
動物病院によって、どれくらいの期間で、どんな手術を執刀できるかは動物病院によって異なります。
外科手術の執刀を経験させてもらえるか、先輩獣医師から指導を受けられるかどうかを事前に確認しましょう。
化学療法ができる動物病院
化学療法はすなわち抗がん剤による治療のことです。
抗がん剤は高価なものや海外輸入が必要なものがあるため、動物病院に常備しないこともあります。
場合によっては抗がん剤治療のために転院をおすすめする動物病院もあり、自身で化学療法を経験できないこともあります。
その動物病院ではどのような化学療法が可能なのかチェックしておきましょう。
放射線療法ができる動物病院
放射線療法ができる放射線照射装置を備えている動物病院は限られます。全国でも数えるほどしかありません。放射線療法を行える動物病院に就職するのがベストではありますが、休日を利用して放射線療法を学ぶのが現実的かもしれません。大学や二次診療施設には放射線照射装置を備えていることが多いので、研修に行くのが良いでしょう。
勉強をする
ここまではどのような環境でキャリアを積んでいくかということを解説しましたが、用意された環境にいるだけでは獣医腫瘍科認定医になることはできません。なぜなら、獣医腫瘍科認定医Ⅱ種には筆記試験があるからです。
獣医がん学会から、筆記試験の出題内容を勉強できるテキストが出版されているので、試験勉強を進める際はこのテキストを中心に知識を身につけると良いでしょう。
まとめ
獣医腫瘍科認定医になると様々なメリットがあります。獣医腫瘍科認定医の特徴には認証経験年数や学会所属年数が認定条件に含まれない点が挙げられます。能力や努力次第で認定受けることが可能ということですね。
獣医腫瘍科認定医を目指す方はしっかり計画を立てて努力していきましょう。